教員になることを志したときに、真っ先に思い浮かぶことは、
“教員免許を取得すること”、“各自治体が行う教員採用試験に合格すること”ではないでしょうか。
…その通りです!
この2つをクリアすることで、“公立学校の教員”になることが出来ます。
…公立学校?…私立学校の教員になるにはどうしたらいいの?
この記事では、私立学校の教員になるために必要なことをイチから紹介しています。教員採用システム、試私立学校の教員になるための3つのルート、私立学校の教員採用試験対策について、公立学校と比較する形で説明しておりますので、私立学校の教員になることを検討されている方は、ぜひ最後まで読み、お役に立ててくださいね!
私立学校の教員採用システム
日本の学校には「公立」と「私立」があり、それぞれによって教員採用システムが異なります。公立学校の場合、”各自治体が行う教員採用試験”の合否によって、自治体が教員をまとめて採用します。合格者は地方公務員として自治体に雇用され、自治体の有する公立学校に配属されます。また、試験の実施時期については、ほとんどの自治体で毎年夏頃と決まっています。
一方で、私立学校の場合、教員を雇用するのは自治体ではなく、各私立学校を運営する学校法人です。学校ごとに採用試験があり、この試験に合格することで、私立学校の教員になることが出来ます。学校によって、採用基準や採用スケジュールが異なるため、気になる学校の求人情報を自身で随時確認することが大切です。求人情報は各学校のホームページから確認できます。
また、私立学校の教員採用システムにおいて、”各学校における学校独自の教員採用試験”に至るまでに大きく3つのルートがあるので、以下で詳しく見ていきましょう!
私立学校の教員になるための3つのルート
自己推薦ルート
最も一般的なルートは、いわゆる一般企業の就活と同じように、働きたい学校を自分で探し、履歴書の送付や面接の申し込みを行い、学校側にアプローチしていく方法です。以下では、その手順を詳しく解説しています。
気になる学校のHPから求人情報を確認
私立学校のHPは、公立学校と比べコンテンツが充実しています。ページの中に求人情報のリンクがあるので、そちらをクリックすることで募集要項を詳しく確認できます。(※学校によっては、求人情報を掲載していない場合があります。)
募集要項をよく確認して、自身に合う条件であれば、応募を行いましょう。応募方法については、エントリーフォームからの応募、書類郵送による応募、電話による応募など学校によって異なります。具体的な応募方法については、募集要項に記載がありますので、記載されている手順に従い、応募を行いましょう。
求人情報は各学校により随時更新されるため、定期的にHPを確認することが大切です。毎年5月から12月にかけて求人の需要が高まる傾向にあります。
また、「日本私学教育研究所」というWebサイトから、全国の私立学校における求人情報を一括で確認することも出来ます。ただし、求人がある場合でも、サイト内に記載がない場合もあるため、本当に働きたい学校であれば、学校に直接問い合わせた方が良いでしょう。
スカウトルート
自己推薦ルートとは異なり、学校側からのスカウトを待つ方法です。ただ、何もせずに待っていても、学校からお声をかけてもらえる…、なんてことはありません。スカウトルートの歩み方を以下で詳しく確認してみましょう。
私学教員適性検査を利用する
「私学教員適性検査」とは、一部の都道府県(※2024/1/22時点では静岡県と福岡県のみ)において私立中学や高校の教員を志望する人に対して実施しているもので、教員としての資質と適性の基礎的・基本的な事項について、検査することを目的としています。
「専門教科・科目」「教職教養」それぞれにABCDの四段階での評価がなされます。その評定に基づき「受検者名簿」が作成され、自治体内の私立学校校長宛に名簿が配布されます。各学校はこれを採用の資料とします。
この私学教員適性検査により採用の合否が決まるわけではなく、検査結果はあくまで、各私立学校が採用を検討するための参考資料となります。学校側は、配布される検査結果を用いて、スカウト活動を行う流れになります。
マッチングサービスを利用する
残念ながら「私学教員適性検査」は令和5年をもって、ほとんどの都道府県で実施が終了となっていますが、代替として下記のようなマッチングサービスを用いて、採用活動を行う自治体が増えてきています。
マッチングサービスに登録することで、以下のようなサービスを受けることが出来ます。
- 全国の求人情報を確認できる
- 教員採用説明会や選考会に参加できる
- 学校側からオファーをもらえる
マッチングサービスの登録は無料で行えるので、自己推薦ルートと並行して利用することをおすすめします。
履歴書委託制度を利用する
「履歴書委託制度」とは、各都道府県の私立中学高等学校協会が教員志望者の履歴書を預かり、その履歴書の情報を各学校に共有する制度です。学校側は共有された情報をもとに、スカウト活動を行う流れになります。ただし、一部の都道府県においては、履歴書委託制度を利用していない場合があるので、こちらの一覧から確認して下さい。
エージェントルート
一般企業への就職活動を行う際に、企業紹介や選考対策などのサポートを行ってくれるエージェントをつけることがしばしばありますが、教員になるためのサポートを行ってくれる、いわゆる”教員版”エージェントを派遣する会社もあります。
エージェントをつけることで、求人情報を学校HPに掲載していない学校からの求人を受けることも出来ます。このからくりは、学校側の心理として、”保護者の方も閲覧できる学校HPに求人情報を掲載することは、不信感に繋がりかねない”という思いがあるからです。
会社によって、求人情報や採用試験対策など、得られる情報や受けられるサービスに違いがあるので、自身に合ったエージェントをつけることが大切です。
私立学校の採用試験対策
公立学校の採用試験と大きく内容は変わりません。書類審査、筆記試験、面接、模擬授業などを通して、学校側は”本当に本校に合う人材かどうか”というところを判断します。ただし、応募する学校によってはすべての試験を実施しない学校もあるので、応募する学校の募集要項を必ず確認しましょう。以下内容で、各フローの内容・対策を確認していきましょう。
Step1:書類審査
学校に提出する書類は、以下の5つが挙げられます。
- 履歴書
- 職務経歴書
- 志望理由書
- 大学等卒業修了証明書
- 教育職員免許状の写し
学校によっては、大学等卒業修了証明書や教育職員免許状の写しの提出が不要な場合もあります。
とりわけ、志望理由書を作成する際は、応募する学校のHPで”建学の精神”を必ず確認するようにしましょう。建学の精神とは、学校側がどのような人材を育成したいかなどの理念や気概、願いをうたいあげたポリシーのようなものです。この精神にそぐわない人は必要ないと判断されてしまうので、志望理由書は必ず建学の精神に則って作成するようにしましょう。
Step2:筆記試験
公立学校の教員採用試験では、多くの自治体で、一般教養・教職教養・専門教科・小論文の4つの筆記試験が課されます。
一方、私立学校の教員採用試験では、4つの筆記試験を課す学校は少なく、専門教科・小論文の2つの筆記試験であることがほとんどです。
専門教科対策
専門教科の試験難易度は、応募する学校によって異なります。進学校を応募する場合は、公立学校の教員採用試験よりも高難易度の試験である可能性が高い、という心構えを持っておいた方が良いでしょう。目安として、共通テストの過去問題でいつでも9割前後を獲得できる状態が望ましいです。
また、公立学校の教員採用試験と違い、私立学校の教員採用試験の過去問題や予想問題集はありません。そのため、具体的な専門教科対策としては、大学入試用の参考書や赤本を用いて、対策を進めていくことになります。使用する参考書を選定する基準として、応募する学校の進学実績を確認すると良いでしょう。進学実績のボリュームゾーンである学校群の個別試験対策となり得る参考書を選ぶようにしましょう。
小論文対策
応募する学校によっては、小論文が課される場合もあります。小論文を書く際に抑えておくべきポイントは、”要点をまとめた自己主張が出来ているかどうか”です。以下の構成を意識して、市販のテキストなどを用いて対策を行いましょう。
- 序論…問題提起を行い、自身の意見を表明する
- 本論…自身の意見を提示して、その論拠も提示する
- 結論…序論・本論の内容をまとめ、最後に自身の意見を再表明する
また、題材になりそうなことをあらかじめ予想しておくことも対策として効果的です。小論文の題材には以下のような例が挙げられます。
- 本校で生徒に身に付けさせたい力と、それに対して自身が貢献できる領域
- 中高一貫校における〇〇科の授業について
- これからの教育の在り方について
- ICT教育の是非
- 本校で実践してみたい教育について
Step3:面接
先に記載したように、私立学校の採用状況として、公立学校のように自治体がまとめて応募者を採用するということはなく、各学校若干名ずつの採用であることがほとんどです。そのため、集団面接の場はなく、個人面接のみというケースがほとんどです。
面接でよく聞かれる項目は以下の通りです。
- 本校を志望した理由は何ですか?
- 本校で貢献できる領域を教えて下さい。
- 公立ではなく私立を志望した理由を教えて下さい。
- 私立の中で本校を志望した理由を教えて下さい。
- 本校の建学の精神について、ご自身の考えを教えて下さい。
- 部活動の指導を受け持つことが出来るものはありますか?
面接を受ける際は、必ず事前に、自身が作成した志望理由書や小論文の内容を確認しておきましょう。面接は、志望理由書や小論文の内容を確認されながら行われます。面接の場における回答と事前の内容に矛盾が生じると、”本当にそう思っているのか?その場しのぎではないのか?”という疑いを持たれてしまいます。
また、応募する学校の”建学の精神”を改めて確認しておきましょう。志望理由書を作成する際と同様、建学の精神に則った受け答えをすることで、”私は御校にとって必要な人材である”というアピールが可能です。
Step4:模擬授業
模擬授業では、管理職(校長、教頭など)や専門教科の先生の前で、実際に授業を行います。授業時間は学校によって異なりますが、15分~30分程度としている学校が多いです。また、授業範囲の指定についても、事前に指定される場合、当日その場で指定される場合、自由に授業範囲を決めることが出来る場合などがあります。事前に指定されている場合については、指導案の提出を求めらるケースもあります。
事前に授業範囲を指定されている場合は、必ず指導案を作成するようにしましょう。指導案を作成することが、そのまま模擬授業対策となるからです。指導案を作成する際は以下の点に注意して作成することを心がけましょう。
- 時間内に収まっているかどうか
- 導入⇒展開⇒総括の流れが崩れていないかどうか
- 伝えるべき項目が整理できているかどうか
また、実際の模擬授業の際には、授業内容に加えて、授業に取り組む姿勢も評価されます。学校側は、”授業の場の雰囲気づくり”が出来ているかどうかを重要視するため、黒板ではなく生徒の方向を見ながら授業を行う、姿勢よく大きな声を心がける、積極的に生徒とのコミュニケーションを図る(双方向授業)、などの工夫も必要です。
おわりに
最後まで記事をお読みいただきありがとうございました。私立学校の教員になるためには、応募する学校の吟味から、試験対策に至るまで、自身で情報を収集することが大切です。今回の記事をぜひご参考頂き、私立学校の教員になるための足掛かりとして頂ければ幸いです。